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Editer:snow Date:2025-10-22 18:24

バーチャル学校vol4-01ワンダリング先生との打ち合わせ



作 林柚希

見上げると、大きなクリスマスツリーがある。
このツリーは、よくある雑踏にあるような大きなツリーではない。
せいぜい、20cm程度の手のひらサイズのツリーだ。
じゃ、なんでこれが見上げるほど大きなツリーかと言うと、僕達が小さくなっているからだ。
安心して住んでいる家の中が、未知の世界になりつつある。
僕達はどうなるのだろうか。

僕はトゥルー。臨海学校から数年経ち、僕は高校生になった。
学校を卒業したらどうしようかな。…なんてことを考えるようになった。
友達、ではなく彼女のケーは、臨海学校の後から正式に付き合うようになった。
正式と言っても、結婚を前提にしているわけではないけれど。
それでも、ケンカもしたし、別れる寸前までになったこともあったけれど、ケーとの付き合いは不思議に続いている。
ケー、いつも側にいてくれて、ありがとうな。

いつもの、学校。
そう、僕の通うこの学校は、身体障碍者を奨励している。
闇協会の息がかかっていたころは、身体障碍者に不思議な力を持たせて教育し、協会員としてこき使うつもりだったらしい。
本当に呆れるし、怒りがつのる。僕達をなんだと思っているのだろうか!

学校に到着した。
「おはよ!」尻尾がウエストにまわされる。ケーだった。
ケーは、ブラウンの制服に身を包んでいる。ブレザーの間から赤いリボンが見える。可愛いな。現在、尻尾はウエストに付けているそうだ。この間コッソリ教わったのだった。
「さてはケーだな!おはよ!」僕は尻尾を振りほどくと、ケーの頭をクリクリした。僕もブラウンの制服だ。ブレザーの間には赤いネクタイがある。これを忘れると学校には入れない。
「ねぇね、何か面白いことない?」ケーは、悪戯っぽい目をして笑っている。最近暇を持て余しているようだ。
「そうだな、何か面白い予感はしない?」僕は逆にケーに訊いてみる。ケーは予言と占いができる。ケーは魔法使いではないけれど、僕には無い能力を持っている。ある意味凄いと尊敬もしている。
「うん。何か面白いことになりそうだけど、トラブルに巻き込まれそうなんだよね。どうしようか?」ケーはちょっと不安そうな顔をして僕に言ってきた。
「まぁ、大丈夫さ。きっとなんとかなるよ。」僕はそうケーの不安を取りのぞけるように言うと、遅刻はヤバイ、と言いながら学校の校舎に急いだ。

学校に入ると、すぐに心の通信が入った。
心の通信とは、私達の世界で言うところのテレパシーのようなものだ。普通の人々は使えないけど、魔法使いとその周辺の人々は使っている。
(トゥルー、おはよう。)ワンダリング先生だ。なんだか機嫌が良さげな明るい声をしているな。
(おはようございます。ワンダリング先生。)僕も、明るい声で応えた。
(実は、頼みたいことがあってね。)なんだろう、本当に明るい話題なんだろう。
(何ですか?)僕は疑問でいっぱいだ。
(実はね、闇協会の情報をキャッチしたんだよ。)ワンダリング先生は説明ももどかしそうだ。
(えっ!?そうなんですか?それで?)僕はどう関係するのだろう。
(闇協会の支部が幾つか判明してね。)ワンダリング先生はちょっと声を落として説明している。
(闇協会の支部?)僕は、いやケーも関わるんだろうか?心配になってきた。
(闇協会の支部をぶっ潰しにいくんだよ。それでね、魔法協会の手が足りなくてね。)ワンダリング先生は、すまなそうな顔をしているのか、声の調子を変えて言っている。
(すまないんだが、君とケーさんの力を貸してほしいんだよ。)どうだろう、と続けて言っていたが。
(そうですね、ケーの力もですか。)僕だけならともかく、ケーは非戦闘員だろうに。これまでいざと言う時いつも力になってくれているけれど、なんとか守らなくちゃ。
(ケーさんの予知の力をあてにしたいんだよ。)ワンダリング先生も、慎重になっている。
(もちろん、タダとは言わない。アルバイト料を出すよ。)
(僕は、…いいんですけど、ケーはどちらかというと非戦闘員です。)僕は食い下がった。ケーが訊いたら水クサイって肘鉄食らわすんだろうな。
(わかっている。それは、ちゃんとサポートをつけるから。君以外にもね。)ワンダリング先生も引かない。
(わかりました。まだケーに、話を聞かせていないんですよね?)僕はちゃんとケーに話して結論を出そう。
(そうだよ。話を受けてもらえないだろうか。)ワンダリング先生は他にあてが無いのだろうか。
(それなら、ケーと話して結論を出します。それまで保留にしてください。)僕はそう言った。
(わかったよ。それなら話を通しておいてくれ。)ワンダリング先生は仕方なさげだ。
(そうします。それでは。)ブツっ。心の通信を切ったら、僕はトイレの個室で籠っていることに気がついた。いけね、授業が始まっちゃう。
僕は、やっとトイレを出て急いで教室に向かったのだった。


物語の初めは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-01 ワンダリング先生との打ち合わせ]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-02 ケーとの話し合い]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-03 同じ日の夜、僕の家にて]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-04 打ち合わせとプラス宣戦布告]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-05 ワンダリング先生の渡してきた本]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-06 戦いの準備]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-07 闇協会の支部での戦い1]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-08 戦いその2]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-09 戦いの終わり、そして]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-10 調べてまわって]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-11 風変わりな依頼]

物語の続きは、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-12 新たな戦い]

物語の最後は、こちらになります。
[バーチャル学校vol4-13 最後の戦い、そして]

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