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Date:2026-02-10 10:46 Editer:Yuzuki Hayashi

湖面の霧vol2-1



作 林柚希

いにしえの時代から変わらずの生活様式だ。
先祖から受け継いだこの生活は、簡単には変わらないだろう。
今日も、トンビが湖の周りを飛んでいる。
とても自由に飛んでいて、羨ましいと思ったものだ。
ああ、珍しく鷹もやってきている。
トンビは、いってしまった。
鷹も何度か旋回すると、飛んでいってしまった。

今朝は、霜が降りていた。
地面を踏んで進むとザクザクと音がする。
テントの外は、冷え込んで口からハアッとため息が漏れ白い湯気がたなびく。
「今朝また随分と冷え込んだものだ。寒い。」
ブルッと震えた私は、テントに戻ると温めた湯で顔を洗った。
「朝餉にしなければ。」
ナスに近い野菜で、カザクと呼ばれるそれを切って鍋に投入する。他に葉物野菜も切り、やはり鍋に入れる。他に鹿肉をひと口大に切り鍋に入れ、貴重な塩で味付けする。
鍋をかき回す度にいい匂いが辺りを漂い食欲をそそる。
「お、やってるね。」
テントの入口をサッと捲ると、冷たい空気と共に男性が一人入って来た。
顔見知りの男性で、高雪という。もう旧知の中でもある。
これしか言わないと怒られそうだけど、まぁ大丈夫、コッソリ教えてるから。
朝の挨拶を済ませると、鍋を囲んでドッカリと座った。
「今日は何かあるの?」彼にいつも肉やら魚やら持ってきてもらっている。
その代わり私が朝餉をご馳走していた。
「今日は、魚を持ってきたよ。」
そういうと、縄を編み込んだバックから中くらいの魚を数匹取り出した。
「塩漬けされた魚だよ。」そう言ってその魚を私に渡してきた。
「貴重なのを手に入れたのね。」
私は、驚いた。漁師のいる海街の集落も遠いし、どうやって手に入れたんだろう。
私は、塩漬けの魚の入手経路を訊いたけど教えてはもらえなかった。
そして、椀にカザクと肉の煮物を入れると米のご飯とともに鍋越しに彼に渡した。
彼は、嬉しそうに受取ると、食べ物を頂く時の種族の感謝の言葉を、短く言い食べ始めた。
「美味い!」
彼はそう短く言うと、口から湯気を立てて笑っていた。
「うん、美味い。今日も上手くできたもんだ。」
私も、種族の感謝の言葉を短く言い、食べ始めると、そんな感想をもらした。
「双葉。」
彼は、椀と箸を置くと、睨んでいるのかというほどの眼力で私を見つめている。
「何?」
私も、椀と箸を置いて、彼の言葉を待った。何だろうなぁ、と思いながら。
「双葉、こういう生活を始めてもう何年ぐらいになるだろうか?」
彼の眼力は変わらない。なんだか知らないけれど怖いなぁ。
「もう10年、15年くらいかなぁ。なんでなの?」
私は、相当間が抜けた答えだったのか。彼は眼力がふっと緩んでちょっと笑っている。「うん、僕はそろそろずっと生活を共にしたいと思ってね。どう思う?」
彼が生活を一緒にしたい、かぁ。その女性はたいそう楽しいだろうな。
それが独り言で漏れていたのだろう。唐突に鍋を迂回して彼が私の腕をがっしりと掴んだ。
「双葉!双葉と生活を共にしたいんだよ。ずっと死が二人を分かつまで。」
彼がとても真剣に言ってきたのと、彼の話す内容に仰天して、言葉に詰まっていた。
私が何も言わずに、しばらく驚いた顔をしていたのだろう、彼がおもむろに言った。
「双葉は、どう思っているの?」
「私?…直ぐ言わなきゃ駄目?」
「うん。即座に行って欲しい。」彼は私の腕をつかんだままだ。
「うん、ちょっと腕を放してね、痛いから。それでね、私は高雪と生活を共にしたいと思っているよ。高雪のこと、大事に思っているから。」
私は、顔が火照るのを感じながら言った。
高雪も顔が火照りだしている。
「えと、ありがとう。僕も真剣に言って成就できると思ってなかったから嬉しい。すごく、嬉しいよ。ちょっと待ってて。」
彼はそう言うと、自分のいつもの席まで戻ると、バックから何か紐のような物を取り出して、私のところに戻って来た。
「この宝石をあげる。受け取ってくれるか?」
私の両手に、するっと収めたその宝石は大体六角形に切られ、上部の穴から黒い紐が付けられている。青く輝くそれは、夏の湖の色のようだ。
「綺麗ね。すごく貴重なものを!本当にありがとう。」
私は、それをずっと眺めていたらまた彼が嬉しいことを言ってくれた。
「もう一度、ちょっと貸して。双葉の首にかけてあげる。」
そういうと、私の両手から宝石をまた受け取り、首にかけてくれた。
胸元に光るそれは、薄暗いテントの中で、きらっと綺麗に輝いていた。
「綺麗ね!」
思わず、彼に突進して、彼をぎゅっと抱きしめた。
彼が本当に大事な人に完全になった瞬間だった。
「すごく嬉しい!ありがとう。」
彼は、私の頭の上でなにやら照れている気配があっのだった。


物語の初めは、こちらになります。
[湖面の霧 vol1-1]

物語の続きは、こちらになります。
[湖面の霧 vol1-2]

物語の続きは、こちらになります。
[湖面の霧 vol1-3]


物語の続きは、こちらになります。
[湖面の霧 vol2-1]

物語の続きは、こちらになります。
[湖面の霧 vol2-2]

物語の続きは、こちらになります。
[湖面の霧 vol2-3]

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