ブログで趣味でプログラミングからお料理まで呟いています。よろしくー。(^-^)/


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●詩●

2023-05-24 23:32:50

邂逅 ~人魚姫~



ポコン。ポコン。
水の中で、泡が立ち上っていく。

目で追っている私を自覚して、目線を自分に移す。
私は、白い服に身を包んでいる。
指は細く長い。
腕も細く長くて白い服に腕が隠れる。
あ、私も水の中なのね。
呼吸は楽。とてもスムーズに楽に呼吸している。

私から、上へ視線を移すと、そこは水の水面が見えず、
光が降り注いでいるのがおぼろげに見える。

上へ行ってみよう。
そう、決心すると、足を蹴って泳ぎ始め…、あれ?

あ、魚の尻尾だ。
私の足は、人間のような2本の足ではなく魚の尻尾のようだ。
そのせいか、すう~っと自然に上に泳ぐことができる。

泳いで、周りを見渡すと、色とりどりの魚が泳いでいる。
「ヒメちゃん。」
「ヒメちゃん、大丈夫?」

そんな風に、声をかけられて、最初は戸惑った。
「ヒメちゃん!」

青い魚のヒレで頬を軽くなでられて、それが私の事なのだとわかった。

「ヒメちゃんて、私?」
「そう、アナタよ!どうしたの?」
「うーん、わからない。」
「しっかりしてよ!じゃあね。」
青い魚はキューって鳴いて去っていった。

もっと、上を目指す。
やがて、水面が見えてくると、日差しを感じて目を瞬いた。

ザバッ。
水面から顔を出すと、そこには小さな舟があり、人間の男性が釣りをしていた。
彼は、私のお友達を釣ってしまうのだろうか?

ちょっと、やめて。…って、言おうと思い、近くへ泳ぎだす。
浅い深さの水の中を泳ぎ、もう一度水面から顔を出す。

彼の顔が近くで見えて、ちょっとビックリして動作が止まる。
彼は、茶色の髪に、茶色の目をしていて、眉に意志の強さを伺わせる。
鼻の辺りにそばかすが、少しだけ。
その彼もビックリしている様子だ。

「君…、誰?」
「彼方こそ、誰なの?」
「僕、ラウル。」
「私は、パール」
「君、どこから泳いできたの?ここは海のど真ん中なのに。」
「あ…、私覚えてなくて。」
そう言っていたら、さっきの青い魚がキューっときて
私に背びれをつかむよう言うと、そのまま去ってしまった。

「イルカー!その娘を連れ去らないで!」
彼の言葉を後に、また水面の底に行ってしまったのだった。

数日後まで、私はいつも、ラウルのことを考えてしまっていた。
あの一瞬に、世界が全て閉じ込められてしまったかのように。

あの驚く瞳に、もう一度逢いたい。
ラウル。
私を覚えていますか?

そして、私は一代決心をする。
おばあさんに、2本の人間の足をもらうように頼むために。
今度こそ、逢えますように。


※よく言われる所の「人魚姫」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「~邂逅~ 人魚姫 vol.1

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~嵐の夜~ 人魚姫 vol.2

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~相談~ 人魚姫 vol.3

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~お側に~ 人魚姫 vol.4

物語の続きは、こちらになります。
紹介「~最期 前編~ 人魚姫 vol.5

物語の最後は、こちらになります。
紹介「~最期 後編~ 人魚姫 vol.6

物語の番外編になります。
紹介「~番外編 イチョウ並木~ 人魚姫 vol.7
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