Editer:snow　Date:2025-06-19 01:34

蛍火の夜 vol.2 ユーリさんに逢って

作 林柚希

久しぶりに、夜ユーリさんに会って
報告してみた
「探偵社って面白そうかなって思ったんですけど
実際はホントに事務作業ばかりで、正直つまんなくって」

「探偵の仕事は危ない場合や恨みを買ったりしますから
しない方がいいと思いますよ」
「そうなんですか？だって浮気調査とかで…あ」
なんとなく理解できた
確かに、一回浮気している旦那さんが文句を言いに
探偵社に来たことがあったっけ
「でも、私もちょっとドキドキしてみたいなぁ」

ユーリさんは大仰にため息をついて
「アナタは私といてもちっともドキドキしてくれないんですねぇ」
「へ！？だって、ユーリさんはいい酒呑み友達のような気がしてて…
ユーリさんだって、私といて、別にドキドキしないでしょ？」
「そんなことないですよ
私はアナタといるのが楽しくて最初はドキドキしていたんですから」
「えええ～～！？そうなんですか？」

「そうですよ」
といって、軽く頬にちゅっとキスしてきた
「ちょっとは、ドキドキしましたか？」

私はびっくりして
口をパクパクしていたら

「それじゃ魚ですよ」
ってくすくす笑われてしまった
そして耳元で
「アナタに一目ぼれだったんですよ」
って、ちょっと頬を染めて告白されちゃった！

「そ、そうだったんですか」
「私に対してはどう思っているんですか？」
「わ、ワタシ？私は…」

急にドキドキしてきて
「私も好きです、たぶん」

「たぶん、じゃ困るんですよ」
「もう～、そんなに責めないでくださいよ」
もうお酒で赤いのか突然の告白で赤いのか皆目わからない

「まぁ、今日はここまでにしときましょうか」
電車で家まで送ってもらった
かなり、迷ったがまぁ一人暮らしだし、いいか
という事で、お茶に誘ったけれど

「この次にしときますよ
お楽しみはね」
といってウインクされたのだった

この次は、珍しく遊園地でデート！
思い切って浴衣を着て行ったら

「色っぽいですよ」
って直球で褒められて、嬉しいけど
なんだか恥ずかしくなってきちゃった

久しぶりで超テンションが上がったけど
夜だけなのが、ちょっと残念
でも、夜の花火を見て
またちょっとハイテンション。

花火の合間でキスしちゃったりして
なかなか楽しいデートだった

珍しくユーリさんの自宅に招待されて
お邪魔したけれど
独身とは思えない程、シンプルでキレイな家だった

私の家よりキレイかも
こ、これは女子としてがんばらなくちゃ！
決意を新たにアチコチつい見ちゃったけど

バスローブとバスタオルを渡されて
「お先にどうぞ」

って言われて
「はぁ」
つい驚いてこういう反応になっちゃったけど
もうこういう時は色っぽいことの一つも言えたらいいのに～

早々にお風呂から上がって、
ユーリさんとバトンタッチ

居間をゆっくり巡っていくと
本棚に原稿用紙が挟まっていたのが見えた
何だろう、と思って見たら
拙い字で「僕について」
と題名がある。

「僕について

僕はバンパイアだ
誰も信じてくれないけれど
お父さんにこっそり教わった
僕はハーフだから血を吸わなくても生きていけるけど
たまに無性に何かが飲みたくなる
それに昼もあまり得意じゃない…」

と書いてある。
小説だろうか？
だけど、最後の方に三角マークと
本当の事を書きましょうね
という赤ペンで諭すような文章が書いてある

「これって創作じゃない…？」
思わず独り言を口にしてしまうと

「いけませんね、勝手に覗くような真似をしては」

振り返ると、静かな顔でユーリさんがいる
頭をバスタオルでふきふきしながら

「それは、私が小学生の頃に書いたものですよ」
「でも、創作なんでしょう？」

「いえ、本当ですよ」
「でも、マサカ…？」
「まぁ、にんにくも十字架もね、まぁなんとかなりますけどね
昼間だけはどうしようもないんですよ」

私は頭が混乱してきた
じゃ、じゃ、私が今日招待されたのって血を吸うため…？


物語の初めは、こちらになります。
蛍火の夜vol1 蛍に逢いに

物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol2 ユーリさんに逢って

物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol3 ユーリさんを知って

物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol4 長い夜を越えて

物語の最後は、こちらになります。
蛍火の夜vol5 日差しを受けて

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