詩、小説
オリジナルな詩と小説達
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Editer:snow Date:2025-06-21 03:27

作 林柚希
私は晴美。
探偵社で事務仕事をしている
彼氏はユーリさんといって日本人とイギリス人のハーフ
実はバンパイアだというのだけれど
夜しか活動しない他は、特にどうってことはない
確かにニンニク料理とかは食べないし
教会には近づかないようにしているようだけれど
小説や映画みたいに、血を欲しがられたことは一度もない
初めての出会いから1年―。
また蛍の見学会のアルバイトを手伝っている
有志で行っているものなので
人手が足りなくて私もかり出された形だ
アルバイトが終わる頃、いつもの通りユーリさんが迎えに来た
「こんばんは」
「こんばんは」
「晴美ちゃんね
ちょっと待っててね
晴美ちゃーん!」
「いいですよ、仕事中でしょうから」
「まぁま、いいからいいから」
「はい
って、ユーリさん、もう来ちゃったの?」
「仕事が早く終わっちゃってね~」
「そか」
「あと、もう少しだからまた見学していってね」
「うん、ありがとう」
仕事の帰り、ユーリさんが
「今日はウチに寄ってくれるかい?」
「いいけど、どうしたんですか?」
「とても、大切な話があるんですよ」
ユーリさんの自宅で
「ストレートに言うとね、一緒になりたいんだ」
「一緒?」
コホンと咳払いをしてから
「晴美さん、私と結婚してほしいんだよ」
「け、結婚!?」
「うん、どうですか?」
「はい、お受けします
…って言いたいけれど、バンパイアにならなきゃだめ?」
「選択肢は2つ
1、君がバンパイアになるか
2、私が人間になるか」
「わ、たしは…人間でいたい…な」
かなりの沈黙の後、ユーリさんは
「わかった、
…私が人間になるよ
君とはずっと一緒にいたいから」
「どうしたらいいの?」
「聖水と君の血が必要になる」
「私の…血」
「君の血は少しでいいんだ
献血ほど採らなくていいんだよ」
「聖水と君の血を一緒に飲むと
私の血は浄化されて、人間になる…と思う
恐らく一晩中苦しむだろうけれど」
「そんなに辛いものなの!?」
「うん、そうらしいんだ」
「じゃあ、私がバンパイアになるためには?」
「君が私の血を飲めば済むよ
たぶん気絶してしまうだけだろう」
それも怖いなぁ
やっぱり人間でいたいけど、ユーリさんがそんなに苦しむなんて…
思い悩んでいると、ユーリさんは苦笑いしながら
「多分、大丈夫だよ
だから、そのために血を少し頂戴ね」
「う、うん」
テーブルにひと瓶、聖水というものが置かれて
「じゃ、君の血をこのコップに移してもらうよ」
指の先をナイフでサクッと切って
ひとたらし、コップに注ぎこむ
すぐに血をふき取ってから、バンドエイドで止血する
そのコップに聖水を注ぎ込み、マドラーでまぜる
それを、ユーリさんが意を決した顔で、一気に飲み干した!
「う…
ノドが焼けるように…痛い」
片手を喉に抑えて、片手を椅子の背を握りしめて苦しみ始めた
「ユーリさんベットに行きましょ?」
「そうです…ね」
肩を貸して、部屋を移動してベットに倒れこんでしまった
頭を枕に乗せてあげて、足をベットに乗せた
急いでタオルを用意して、額の汗を拭う
「ああ…うう…」
とても苦しそうだ
苦悶の表情がなかなか和らがない
このまま、死ぬようなことはないのだろうか?
バンパイアにとって、聖水なんて毒のようなものなんじゃ…
私は選択を誤ったんじゃないか?
頭の中を様々な事が駆け巡る
たまに苦悶の表情だけでなく、咆哮のようなものまで聞こえ出して
やはり、彼は人間じゃないんだ、と思い知らされる
だけど、死んでほしくない
こんな時、誰に祈ったらいいんだろう?
神様に祈ったら、逆に殺されてしまうんじゃないだろか?
やっぱり、やっぱり
「ユーリさん、私がバンパイアになれば
楽なんだよね?
今からじゃだめなの?」
ユーリさんは苦しそうに悶えながら
「もう遅いんだ
聖水を飲んだからね」
涙が出てきた
こんなに辛いなんて、知らなかった
私がバンパイアになってもよかった
私は、こんなにユーリさんが好きだったんだ
「ユーリさん、ごめんね
私がバンパイアになってもよかったね
ごめんね」
一生懸命、汗を拭きとりながら
泣きながら、やっているうちに
私の涙がポタポタと彼の顔にこぼれてしまった
すると、涙がすっと顔に吸い込まれて
彼の苦悶の表情が、薄れていき
やがて、すやすやと寝息をたてはじめた
私は何が起きたのかよく分からなかった
でも、きっと彼は助かったのだ
良かった、助かったんだ
彼はひょっとしたらバンパイアのままかもしれないけれど
その時はその時だ
私も決心がついた
すると、窓の方から一匹のコウモリが飛んできて
一人の人間になった
いや、バンパイア?
「誰ですか?」
「この息子の父親なんですよ」
「お義父様ですか?」
「息子は人間になる方を選んだようですね」
「彼はそちらを確かに選択しました
でも、人間になったんでしょうか?」
「おそらくは
寂しいことだが、仕方がないんでしょうね」
「すみません
私の覚悟が足らなかったようですね」
「違うんですよ
息子は貴方のおかげで助かったんですよ」
「どういう事でしょう?」
「人間になるためには、聖水と恋人の血の他に
恋人の涙も必要なんですよ
息子は忘れていたようですがね」
「そうなんですか!?じゃ、さっき吸い込まれた涙が…」
「そう、それが必要なんですよ」
お義父様は時計を見て
「もう、時間がないようですね
おそらく、会うことはもうないでしょうけれど
息子をよろしくお願いします」
そう、お辞儀をすると、また一匹のコウモリになって
窓から外へ出て行ってしまった
気づくともう、5時頃だろうか
徐々に薄日が差して
太陽の日が入ってくるようになってきた
「う…」
ユーリさんが目を覚ました
「あ、晴美さん?」
「そう、私、晴美ですよ」
眩しそうに、目を細めて
「あ、日が差してきちゃったから
地下へ行かないと…」
「もう、大丈夫なんですって」
「何が?」
「あなたのお義父様に会ったんですけどね
人間になれたでしょう、って言ってましたよ」
「本当に、お父さんが?」
「そういえば、もう日が差しているのに平気だ」
信じられないという顔で、またリビングまで行くと
聖水を、コップに注いで、また一気にあおってみる
「あっ、そんな事したら!」
でも、なんの変化もない
「びっくりした!
私は本当に人間になれたんだ
やったー!!なれたんだ!!」
私も、心の底から嬉しかったけれど
徹夜を久しぶりにして、急に眠くなってきてふらついてしまった
「晴美さん、大丈夫?」
「私は大丈夫
うん、ユーリさん、よく頑張りましたね」
ユーリさんは満足そうに
「一緒にベットでひと眠りしますか」
「そうですね」
えいっと、またお姫様抱っこされて、
私達はベットで半日過ごしました
窓から、日差しが入って顔や体に当たっても
ユーリさんはすやすやと眠っている様子を
私は凄く嬉しい気持ちで眺めていました
物語の初めは、こちらになります。
蛍火の夜vol1 蛍に逢いに
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol2 ユーリさんに逢って
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol3 ユーリさんを知って
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol4 長い夜を越えて
物語の最後は、こちらになります。
蛍火の夜vol5 日差しを受けて
蛍火の夜 vol.4 長い夜を越えて

作 林柚希
私は晴美。
探偵社で事務仕事をしている
彼氏はユーリさんといって日本人とイギリス人のハーフ
実はバンパイアだというのだけれど
夜しか活動しない他は、特にどうってことはない
確かにニンニク料理とかは食べないし
教会には近づかないようにしているようだけれど
小説や映画みたいに、血を欲しがられたことは一度もない
初めての出会いから1年―。
また蛍の見学会のアルバイトを手伝っている
有志で行っているものなので
人手が足りなくて私もかり出された形だ
アルバイトが終わる頃、いつもの通りユーリさんが迎えに来た
「こんばんは」
「こんばんは」
「晴美ちゃんね
ちょっと待っててね
晴美ちゃーん!」
「いいですよ、仕事中でしょうから」
「まぁま、いいからいいから」
「はい
って、ユーリさん、もう来ちゃったの?」
「仕事が早く終わっちゃってね~」
「そか」
「あと、もう少しだからまた見学していってね」
「うん、ありがとう」
仕事の帰り、ユーリさんが
「今日はウチに寄ってくれるかい?」
「いいけど、どうしたんですか?」
「とても、大切な話があるんですよ」
ユーリさんの自宅で
「ストレートに言うとね、一緒になりたいんだ」
「一緒?」
コホンと咳払いをしてから
「晴美さん、私と結婚してほしいんだよ」
「け、結婚!?」
「うん、どうですか?」
「はい、お受けします
…って言いたいけれど、バンパイアにならなきゃだめ?」
「選択肢は2つ
1、君がバンパイアになるか
2、私が人間になるか」
「わ、たしは…人間でいたい…な」
かなりの沈黙の後、ユーリさんは
「わかった、
…私が人間になるよ
君とはずっと一緒にいたいから」
「どうしたらいいの?」
「聖水と君の血が必要になる」
「私の…血」
「君の血は少しでいいんだ
献血ほど採らなくていいんだよ」
「聖水と君の血を一緒に飲むと
私の血は浄化されて、人間になる…と思う
恐らく一晩中苦しむだろうけれど」
「そんなに辛いものなの!?」
「うん、そうらしいんだ」
「じゃあ、私がバンパイアになるためには?」
「君が私の血を飲めば済むよ
たぶん気絶してしまうだけだろう」
それも怖いなぁ
やっぱり人間でいたいけど、ユーリさんがそんなに苦しむなんて…
思い悩んでいると、ユーリさんは苦笑いしながら
「多分、大丈夫だよ
だから、そのために血を少し頂戴ね」
「う、うん」
テーブルにひと瓶、聖水というものが置かれて
「じゃ、君の血をこのコップに移してもらうよ」
指の先をナイフでサクッと切って
ひとたらし、コップに注ぎこむ
すぐに血をふき取ってから、バンドエイドで止血する
そのコップに聖水を注ぎ込み、マドラーでまぜる
それを、ユーリさんが意を決した顔で、一気に飲み干した!
「う…
ノドが焼けるように…痛い」
片手を喉に抑えて、片手を椅子の背を握りしめて苦しみ始めた
「ユーリさんベットに行きましょ?」
「そうです…ね」
肩を貸して、部屋を移動してベットに倒れこんでしまった
頭を枕に乗せてあげて、足をベットに乗せた
急いでタオルを用意して、額の汗を拭う
「ああ…うう…」
とても苦しそうだ
苦悶の表情がなかなか和らがない
このまま、死ぬようなことはないのだろうか?
バンパイアにとって、聖水なんて毒のようなものなんじゃ…
私は選択を誤ったんじゃないか?
頭の中を様々な事が駆け巡る
たまに苦悶の表情だけでなく、咆哮のようなものまで聞こえ出して
やはり、彼は人間じゃないんだ、と思い知らされる
だけど、死んでほしくない
こんな時、誰に祈ったらいいんだろう?
神様に祈ったら、逆に殺されてしまうんじゃないだろか?
やっぱり、やっぱり
「ユーリさん、私がバンパイアになれば
楽なんだよね?
今からじゃだめなの?」
ユーリさんは苦しそうに悶えながら
「もう遅いんだ
聖水を飲んだからね」
涙が出てきた
こんなに辛いなんて、知らなかった
私がバンパイアになってもよかった
私は、こんなにユーリさんが好きだったんだ
「ユーリさん、ごめんね
私がバンパイアになってもよかったね
ごめんね」
一生懸命、汗を拭きとりながら
泣きながら、やっているうちに
私の涙がポタポタと彼の顔にこぼれてしまった
すると、涙がすっと顔に吸い込まれて
彼の苦悶の表情が、薄れていき
やがて、すやすやと寝息をたてはじめた
私は何が起きたのかよく分からなかった
でも、きっと彼は助かったのだ
良かった、助かったんだ
彼はひょっとしたらバンパイアのままかもしれないけれど
その時はその時だ
私も決心がついた
すると、窓の方から一匹のコウモリが飛んできて
一人の人間になった
いや、バンパイア?
「誰ですか?」
「この息子の父親なんですよ」
「お義父様ですか?」
「息子は人間になる方を選んだようですね」
「彼はそちらを確かに選択しました
でも、人間になったんでしょうか?」
「おそらくは
寂しいことだが、仕方がないんでしょうね」
「すみません
私の覚悟が足らなかったようですね」
「違うんですよ
息子は貴方のおかげで助かったんですよ」
「どういう事でしょう?」
「人間になるためには、聖水と恋人の血の他に
恋人の涙も必要なんですよ
息子は忘れていたようですがね」
「そうなんですか!?じゃ、さっき吸い込まれた涙が…」
「そう、それが必要なんですよ」
お義父様は時計を見て
「もう、時間がないようですね
おそらく、会うことはもうないでしょうけれど
息子をよろしくお願いします」
そう、お辞儀をすると、また一匹のコウモリになって
窓から外へ出て行ってしまった
気づくともう、5時頃だろうか
徐々に薄日が差して
太陽の日が入ってくるようになってきた
「う…」
ユーリさんが目を覚ました
「あ、晴美さん?」
「そう、私、晴美ですよ」
眩しそうに、目を細めて
「あ、日が差してきちゃったから
地下へ行かないと…」
「もう、大丈夫なんですって」
「何が?」
「あなたのお義父様に会ったんですけどね
人間になれたでしょう、って言ってましたよ」
「本当に、お父さんが?」
「そういえば、もう日が差しているのに平気だ」
信じられないという顔で、またリビングまで行くと
聖水を、コップに注いで、また一気にあおってみる
「あっ、そんな事したら!」
でも、なんの変化もない
「びっくりした!
私は本当に人間になれたんだ
やったー!!なれたんだ!!」
私も、心の底から嬉しかったけれど
徹夜を久しぶりにして、急に眠くなってきてふらついてしまった
「晴美さん、大丈夫?」
「私は大丈夫
うん、ユーリさん、よく頑張りましたね」
ユーリさんは満足そうに
「一緒にベットでひと眠りしますか」
「そうですね」
えいっと、またお姫様抱っこされて、
私達はベットで半日過ごしました
窓から、日差しが入って顔や体に当たっても
ユーリさんはすやすやと眠っている様子を
私は凄く嬉しい気持ちで眺めていました
物語の初めは、こちらになります。
蛍火の夜vol1 蛍に逢いに
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol2 ユーリさんに逢って
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol3 ユーリさんを知って
物語の続きは、こちらになります。
蛍火の夜vol4 長い夜を越えて
物語の最後は、こちらになります。
蛍火の夜vol5 日差しを受けて
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