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Editer:snow Date:2025-06-26 01:19

福の神さまのおじいさん



作 林柚希

私はまいこ
舞姫の舞子って書くって聞いたけど
漢字ってよくわからない

ある日、家の神棚で恒例の「お祈り」をしていた時
私も「いいことがありますように」と
お祈りしてみた
そうしたら「よきかな、よきかな」
って声が聞こえた気がするけれど
誰も聞いてないって
お父さんもお母さんもおじいさんもおばあさんも

今日はお祭りの日
綿あめにりんごあめ、お面にくじ引き
焼きそばにお好み焼き
たくさんのお店の先には、神社があって
舞台っていうのが、作られていて
お面をかぶった、人が舞を舞っているんだって
何をしているのかよく分からなかったけれど
「舞子の舞なんだよ」って教えてもらった

でも、無料でもらったお気に入りの風船を飛ばしてしまって
悲しくなって、風船を探しにしくしく泣きながら
探していた時に
「お嬢さんや」って声をかけられた
「ん?」顔をあげてみると
優しそうなおじいさんが
「これ、さがしておったんじゃろ?」
と風船を差し出してくれた
「うん、そうなの!」
舞子は風船を受け取って
「ありがとう!おじいさん」
嬉しくてつい知らない人に声かけちゃったけど
「知らない人にはついて行っちゃいけません」
というお母さんの話を思い出して、ちょっと迷ったけれど
「お嬢さん、家族か、友達はどうしたのかの?」
という話でハッとして
そうだ、お母さんとはぐれちゃった!

途端に心細くなって、
「どうしよう。迷っちゃった」
しくしく、また泣きたくなってきたけれど
「わしが一緒に探してあげるから、泣きなさんな」
と頭をなでなでしてもらった

きっとこのおじいさんなら大丈夫
「うん、探してね、おじいさん」
「そうじゃの、誰と一緒にきたんじゃろか?」
「お母さん」
「そうかそうか」
どれどれ、とあちこちきょろきょろしていたら

「舞子!」
お母さんから声がかけられた!
「お母さん」
「舞子、どこ行ってたの?探したのよ?」
「あのね、風船を探していたの、なくしちゃったから」

「でも、見つけたのね、よかったわね」
お母さんはほっとして手を繋いでくれた
「あのおじいさんがね」
と言って振り向いた時
そこには誰もいなかった
「あれ?」
「どうしたの?」とお母さん
「おじいさんがね、風船をね」と言いかけて

「あなた、一人しかいなかったようだけれどね、
居眠りでもしていたんじゃないの?」
「そんなことないよ」

「ま、いいわ。金魚すくいしたいって言っていたでしょ?
いいの?しなくて」
「うん、するする!」
お囃子の音を背に、金魚すくいのお店に立ち寄った
赤や黄色やいろんな色の金魚がいる
ポイという、薄い紙の付いた平たい輪の様なものと入れ物をもらって
金魚をすくってみることにした

でも、一匹すくっただけで、直ぐに破れてしまった
「え~?もう~?」
むくれたくなった時、またあの声が聞こえてきた

「お嬢さん、これでもう一度やってみなされ」
なんとお店の人がさっきのあのおじいさん!

「うん!」
黄色のポイを受け取ってまた、試してみる

すると不思議なことに
赤や金色や黒や色んな色の金魚が次々放り投げる事が出来た
でももうちょっと、ってよくばろうと思った途端、
破けてしまった

でも、全部で七匹
キレイにビニール袋に入れられて
気持ちよさそうに泳いでいる金魚を見つめて
お母さんが「よかったわね。たくさん、すくえて」
「うん!」

あのおじいさんにお礼を言わなきゃ!
「ありがとう!お…」

「また、きてや!お嬢ちゃん!」
顔を向けると、威勢のいい中年のおじさんに声をかけられて
またびっくり!

あれ?あのおじいさんは?
「お母さん、さっきポイをくれたの、おじいさんだったよね?」
「何言ってるの、おじいさんほど年取ってなかったでしょ?
あなた、疲れちゃったのかしらね」

不思議な気持ちになったけれど、まぁいいか
お囃子と雑踏の音にまぎれて
「よきかな、よきかな」
って声が、また聞こえた気がした

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