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Editer:snow Date:2025-12-09 21:13

とある男の顛末記



作 林柚希

「サンタクロースからの贈り物だよ」そう言って、チョコの入った小さな小さなプレゼントを女の子に渡した。
髭を蓄えた僕は、髭がチクチクするのをなんとか避けて、公園で無料でプレゼントを小さな子供に渡していた。
これは、慈善事業ではない。ハッキリ言って仕込んでいるに過ぎない。
僕は、たまにコソ泥をしている。
褒められたものじゃないのは重々承知している。
今回は年末の差し迫った家にちょっとお邪魔しようかと、子供たちに色々聞いてお家事情を伺っている。
そうか~、あの青い屋根の家はペットはいないんだな。シメシメ。
思わず下卑た笑みが広がりそうになるのを懸命に抑える。
いけない、僕は今サンタクロースに扮している。
タダでプレゼントがもらえるとあって、子供たちが群がってきたが、適当なところでいなした。

「ふむ、こんなもんだな。」独り言を言いながら、家に帰ったのだった。
自宅は、今いた公園から、歩いて30分ってところだった。あ、これは内緒な。
さて、今回のヤマはここにしよう。

パソコンで地図を見ながら、思わずほくそ笑む。
そこは、なかなか中堅どころの家、と言った感でお金を持っていそうだ。
物も子供の自転車や、親だと思われる大人用自転車などが家の前に写っている。
最近のITとやらは僕達に親切だよな。
よし、今夜決行だ。
一人で決めると、黒いスェットに黒のパーカーに着替えた。
黒いマスクに、ピッチリした手袋も黒仕様だ。
道具の点検をすると、外出することにした。

自動車を運転して、近くの公園の空いたスペースに止める。
この公園は、鬱蒼としていて、目隠しにはもってこいだった。
静かに自動車を降りると、目当ての家の前にやって来た。

(よしっ。)こう思いながら、一人拳を握ると家の庭に侵入して勝手口を探した。
庭はあまり手入れされていない。
木々もフサフサしていて伸び放題だった。
「あった!」おおっと。シーー!思わず出た声を抑える。
ここでバレたら、何もかもおじゃんだ。
近づいて勝手口を調べると、鍵がかかっていた。
なるほど。簡単にかちりと引っ掛けるだけのタイプのようだ。

ドアのすりガラスに、簡単に目張りをして、トンカチで穴をあける。
くぐもった音がしたが、家の住人にはバレていないようだ。いいぞ!

手が入る大きさまで割ると手を突っ込み、ドアのカギを外した。
キイ。
サッとドアを開けて中に入る。
家の中は、ふんわか暖かい。
まぁ、家の住人は寝ているようで、家の中はシーンと静かだった。
取り敢えず、タンスを探す。
タンス貯金ないかな~。
思わず、鼻歌が出そうだった。
あったのだ、タンス貯金が!
おお~。封筒にお札が入っている。
それを懐にしまって、もう少し物色しようと家の中を少し警戒しながら歩いた。

そろそろ、出ようかと思った頃、後ろのドアが軋んで、キイ~と音がした。
思わず「ヒッ」と声が出そうになったので手で押さえる。

戸が開き、そこから明かりが漏れる。
すると、「あんちゃん、だれ?」
「は?」思わず振り返ると、パジャマ姿の子供が眠たそうな顔でこちらを見ていた。

「僕?僕はね。。」マサカコソ泥とも言えずにどうしようか迷っていたら。

「昼間のサンタさん?」子供がふぁぁとあくびをしながら言ってきた。
(これはいいんじゃないか?)思わず芝居がかった笑みを浮かべる。
「そうだよ。君の家に遊びに来ちゃったんだ。」ちょっとノリすぎたか。
「サンタさん遊びに来たの?」子供の目が輝きだす。
「そうだよ。でも。。」言いかけたが、遮られる。

「それなら、僕の部屋に来て!」子供が、僕の袖を引っ張り誘う。
困ったな、もうズラかろうと思ったのにな。

(仕方ない。適当に合わせるか。)「君に部屋はどこだい?」
「僕の部屋は、。2階だよ!」さぁ、行こうと誘って先に歩き出した。

トントントン。階段で足音を指せる子供だが、僕は一切音がしていない。
そして、飛行機のイラストが木でつくられているものがかかった部屋に来た。

部屋の戸を開き、中は典型的な子供部屋だ――ベッドの横まで歩く。
すると、フッと床の感触が無くなり、そのまま落下していった。
「ぎゃあああああ。」ドサッ。
おーーー。無事だった。あぁ、かなり驚いた。
周囲を見回すと、そこは居間で、どうやらソファに運良く落ちたようだった。

すると、「あんちゃーーん。あんちゃーん。」と探すような声がする!
なんだこの家。
「あんちゃーん、見つけた。」いつの間にか、背後から声がした。
「ぎゃぁ!」思わず逃げの体制になる。
(もういい、ズラかろう。)
「あんちゃんは帰るよ!」
「そう言わずに遊ぼうよ…。」子供がなにやらニタついた笑顔になる。
そして、気が付くと、一人ではなく、5人くらい周りを囲まれている。
「ええい、ベタベタした手で触るな!」僕は、伸びる手を振りほどき、勝手口に急いで駆けだした。

そして、やっと外に出た!と思ったら。
なんとさっきの居間で縮こまって、横になっている自分に気づいた。
「なんで!」
周囲をよく見ると、あばら家で、所々土がむき出しになっている。
家の中は、方々に草が生えていた。
「もう、どうなっているんだ!」
半分以上、パニックになりながら、勝手口に急ぐ。

キイ。
勝手口を出た僕は、急いで庭を回って急いで家を離れたのだった。

後日、この家のうわさ話を聞いた。
タヌキが沢山住んでいるとか、幽霊が夜な夜なパーティを開いているとか。
ろくなもんじゃなかった。
ちなみに、懐に入れた封筒の辺りを調べたら、数枚の枯れた葉が入っているのみだったのだった。

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