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Editer:snow Date:2025-08-22 11:22

作 林柚希
朝、後輩がバタバタ駆けながら、
「すみませーん、遅刻しちゃって。」
と言ってくる。
私、小林奈津美も、
「しょうがないなぁ、これで三回目だよ。気をつけてね。」
「小林先輩、すみません。」
「まぁ、いいから、いいから、朝練始めて。」
「はいっ。」
これまで、私の所属しているバドミントン同好会は、経験者ばかりだったので、ルールを覚え直す程度で、後は、顧問の多少の指導もあってか、楽に運営できたのだが。
最近、入部してきた二人の後輩がまた、全くの初心者だった。
ラケットも触ったことがないのだそう。
ラケットの握り方から教えなければならない。
「ラケットの握り方はイースタングリップと、ウエスタングリップとあってね…。」
実際に握らせながら、自分もラケットを握りながら、違いを教える。
「イースタングリップは、丁度、包丁を持つ持ち方を、イメージしてもらえるとわかりやすいんじゃないかな。」
持ち方を変えてから、
「ウエスタングリップは、今度はフライパンの持ち方を、イメージしてもらえたらいいかも。」
それからスイングして、違いを見せる。
こんな調子で、握り方から、ラケットの振り方、まぁスイングなんだけど、ルールまでなかなかたどり着けない。
私もここまで丁寧に教えたことは久しぶりなので、たまにイライラしそうになるが、ちょうどいいところで孝太郎と、二人の後輩も手伝ってくれているので、なんとか助かっている。
本当の部活動だったら、まず基礎体力作りから、なんだろうが、そこで、コケて退会されても困る。
非常に、困る!
二人、抜けられると、顧問の先生との約束で同好会が解散になってしまいそうなのだ。
なので、イキナリだがバドミントンのいろはから教え始めていたのだった。
でも、遅刻グセがあるにはあるが、根気よくついてきているので、正直ほっとしている。
あれから、一ヶ月。
運動神経は入部した二人とも良い方で、みるみるマスターしてくれた。
遅刻グセはなかなか直らないのだが。
朝練で、模擬試合をしてみる。
入部してくれた女の子二人は、まだ一年生だった。
ひょっとしたら、友達とかも誘ってくれればもっと入部希望者が増えるかも?
なーんて考えていたけれど、孝太郎にいっぱつで見抜かれて。
「あんまり欲張らない方がいいんじゃないのか?夢見てると後でがっかりするぞ。」って、たしなめられてしまった。
「いいじゃん、夢見たって。」
「でも、ガッカリするのはお前だぞ。」
「だってさー。」
「ほら、きたぞ。」
おっと危ないシャトルが来た。
落ちそうな寸前ではね返す。
一年生がまたシャトルを打ちかえす。
孝太郎は、自分の必殺技で瞬殺してきた。
「孝太郎、一年生相手にそれは可哀そうでしょ。」
「だってさ、もう時間ないし、これやらないと調子が出ないからさ。」
と言って、ラケットをスイングする。
体育館の時計を見ると、もうあと十五分くらいだ。
やばっ。
「試合の途中だけど、これで朝練を終了します。」
「はい、先輩。」
とりあえず、急いでネットを片付けてそれぞれ部室で着替えることにした。
同好会なので、部室はテニス部の部屋を間借りしている。
着替えていたら、突然後輩の一年生が尋ねてきた。
「山田先輩ってかっこいいですよね?」
「孝太郎が?そう?」
「山田先輩って彼女いるんですか?」
驚くと同時に、
「そうだね、たぶんいないと思うけど。」
時間も忘れて答える。
後輩は嬉しそうに、
「やった、脈ありかも。」
その友達も、
「アタックしてみようよ、ね。」
「そうだね、ありがとうございます、小林先輩。」
「い、いえいえ。」
やばいっ。ほんとに時間がない。
「とりあえず、急ごう!遅刻しそう。」
「そうですね。」
バタバタと急いで教室に行く。
先生はまだ来ていなかった。
セーフ!
それにしても、びっくりだ。
孝太郎がモテてるなんて。
孝太郎とはクラスが違うので。
一緒になるのは、お昼のお弁当の時くらいなんだが。
そっかー。
告白されるんだろうな~。
そう、思ったら胸がチクっとした。
なんか、やだな。
孝太郎、どうするんだろう、つき合うのかな?
そうしたら、私は…。
私はウジウジするのは嫌いだ。
私も訊いてみよう。
キーンコーンカーンコーン。
お昼休みだ。
たまに同じクラスの友達とお弁当を食べているのだけど。
今日はパスして、急いで孝太郎のクラスに行く。
「山田孝太郎、いる?」
「ああ、ちょっと待って。」
「おーい、こうたろっち!」
「何?」
あ、孝太郎だ。
「お前に用事だって。」
「どうした?」
「今日、お昼一緒に屋上で食べない?」
「ああ、ちょっと待ってて。パン買ってくるから。」
「ん、わかった。」
購買部でパンを3つくらいと飲み物を買ってきて、一緒に屋上に行く。
二、三人いるが、はじっこをぶんどって腰を下ろす。
「最近、一緒じゃなかったよな?なんかあったのか?」
「そうだね。」
単刀直入に切り出してみる。
「孝太郎ってさ、好きな子っているの?」
孝太郎は焼きそばパンのヤキソバをぶっと吹き出して。
「な、なんだよ、やぶからぼうに。」
「いいから。」
「お、俺?い、いるよ。」
「そか、いるんだ。」
これは予想以上にショックだ。
頭にほんとにマンガみたいにガーンってなる。
「お前は、どうなんだよ?」
「わた、私?」
「私は、…わかんない。」
「わかんないってどういう事なんだよ?」
そっか、そうなんだ。
私は、
「私も、いるかもしんない。」
孝太郎も目を大きくしてびっくりしたようだ。
「そっか、お前もいるんだ。」
なんだか、シーンとなった。
ご飯は全て食べ終えた。
もう、話すことなんてない。
「そろそろ、教室戻るね。」
「え、ちょっ、待てよ、奈津子!」
手早くお弁当をまとめると、ダッシュで屋上を駆け下りていった。
「あいつ…。」
孝太郎はポリポリと頭をかいた。
入れ違いに同好会の一年生の後輩二人が来た。
「山田先輩、話があります。」
カンの鋭い孝太郎は、なんだかわかったような気がした。
「話って何?」
込み入った話を二人は始めたのだった。
物語の初めは、こちらになります。
バドミントン同好会 1 -不調からの始まりの物語-
物語の続きは、こちらになります。
バトミントン同好会 2 -廃部と入部と-
物語の続きは、こちらになります。
バドミントン同好会 3 -孝太郎と恋バナと-
物語の続きは、こちらになります。
バドミントン同好会 4 -成就と失恋と-
バドミントン同好会3 -孝太郎と恋バナと-

作 林柚希
朝、後輩がバタバタ駆けながら、
「すみませーん、遅刻しちゃって。」
と言ってくる。
私、小林奈津美も、
「しょうがないなぁ、これで三回目だよ。気をつけてね。」
「小林先輩、すみません。」
「まぁ、いいから、いいから、朝練始めて。」
「はいっ。」
これまで、私の所属しているバドミントン同好会は、経験者ばかりだったので、ルールを覚え直す程度で、後は、顧問の多少の指導もあってか、楽に運営できたのだが。
最近、入部してきた二人の後輩がまた、全くの初心者だった。
ラケットも触ったことがないのだそう。
ラケットの握り方から教えなければならない。
「ラケットの握り方はイースタングリップと、ウエスタングリップとあってね…。」
実際に握らせながら、自分もラケットを握りながら、違いを教える。
「イースタングリップは、丁度、包丁を持つ持ち方を、イメージしてもらえるとわかりやすいんじゃないかな。」
持ち方を変えてから、
「ウエスタングリップは、今度はフライパンの持ち方を、イメージしてもらえたらいいかも。」
それからスイングして、違いを見せる。
こんな調子で、握り方から、ラケットの振り方、まぁスイングなんだけど、ルールまでなかなかたどり着けない。
私もここまで丁寧に教えたことは久しぶりなので、たまにイライラしそうになるが、ちょうどいいところで孝太郎と、二人の後輩も手伝ってくれているので、なんとか助かっている。
本当の部活動だったら、まず基礎体力作りから、なんだろうが、そこで、コケて退会されても困る。
非常に、困る!
二人、抜けられると、顧問の先生との約束で同好会が解散になってしまいそうなのだ。
なので、イキナリだがバドミントンのいろはから教え始めていたのだった。
でも、遅刻グセがあるにはあるが、根気よくついてきているので、正直ほっとしている。
あれから、一ヶ月。
運動神経は入部した二人とも良い方で、みるみるマスターしてくれた。
遅刻グセはなかなか直らないのだが。
朝練で、模擬試合をしてみる。
入部してくれた女の子二人は、まだ一年生だった。
ひょっとしたら、友達とかも誘ってくれればもっと入部希望者が増えるかも?
なーんて考えていたけれど、孝太郎にいっぱつで見抜かれて。
「あんまり欲張らない方がいいんじゃないのか?夢見てると後でがっかりするぞ。」って、たしなめられてしまった。
「いいじゃん、夢見たって。」
「でも、ガッカリするのはお前だぞ。」
「だってさー。」
「ほら、きたぞ。」
おっと危ないシャトルが来た。
落ちそうな寸前ではね返す。
一年生がまたシャトルを打ちかえす。
孝太郎は、自分の必殺技で瞬殺してきた。
「孝太郎、一年生相手にそれは可哀そうでしょ。」
「だってさ、もう時間ないし、これやらないと調子が出ないからさ。」
と言って、ラケットをスイングする。
体育館の時計を見ると、もうあと十五分くらいだ。
やばっ。
「試合の途中だけど、これで朝練を終了します。」
「はい、先輩。」
とりあえず、急いでネットを片付けてそれぞれ部室で着替えることにした。
同好会なので、部室はテニス部の部屋を間借りしている。
着替えていたら、突然後輩の一年生が尋ねてきた。
「山田先輩ってかっこいいですよね?」
「孝太郎が?そう?」
「山田先輩って彼女いるんですか?」
驚くと同時に、
「そうだね、たぶんいないと思うけど。」
時間も忘れて答える。
後輩は嬉しそうに、
「やった、脈ありかも。」
その友達も、
「アタックしてみようよ、ね。」
「そうだね、ありがとうございます、小林先輩。」
「い、いえいえ。」
やばいっ。ほんとに時間がない。
「とりあえず、急ごう!遅刻しそう。」
「そうですね。」
バタバタと急いで教室に行く。
先生はまだ来ていなかった。
セーフ!
それにしても、びっくりだ。
孝太郎がモテてるなんて。
孝太郎とはクラスが違うので。
一緒になるのは、お昼のお弁当の時くらいなんだが。
そっかー。
告白されるんだろうな~。
そう、思ったら胸がチクっとした。
なんか、やだな。
孝太郎、どうするんだろう、つき合うのかな?
そうしたら、私は…。
私はウジウジするのは嫌いだ。
私も訊いてみよう。
キーンコーンカーンコーン。
お昼休みだ。
たまに同じクラスの友達とお弁当を食べているのだけど。
今日はパスして、急いで孝太郎のクラスに行く。
「山田孝太郎、いる?」
「ああ、ちょっと待って。」
「おーい、こうたろっち!」
「何?」
あ、孝太郎だ。
「お前に用事だって。」
「どうした?」
「今日、お昼一緒に屋上で食べない?」
「ああ、ちょっと待ってて。パン買ってくるから。」
「ん、わかった。」
購買部でパンを3つくらいと飲み物を買ってきて、一緒に屋上に行く。
二、三人いるが、はじっこをぶんどって腰を下ろす。
「最近、一緒じゃなかったよな?なんかあったのか?」
「そうだね。」
単刀直入に切り出してみる。
「孝太郎ってさ、好きな子っているの?」
孝太郎は焼きそばパンのヤキソバをぶっと吹き出して。
「な、なんだよ、やぶからぼうに。」
「いいから。」
「お、俺?い、いるよ。」
「そか、いるんだ。」
これは予想以上にショックだ。
頭にほんとにマンガみたいにガーンってなる。
「お前は、どうなんだよ?」
「わた、私?」
「私は、…わかんない。」
「わかんないってどういう事なんだよ?」
そっか、そうなんだ。
私は、
「私も、いるかもしんない。」
孝太郎も目を大きくしてびっくりしたようだ。
「そっか、お前もいるんだ。」
なんだか、シーンとなった。
ご飯は全て食べ終えた。
もう、話すことなんてない。
「そろそろ、教室戻るね。」
「え、ちょっ、待てよ、奈津子!」
手早くお弁当をまとめると、ダッシュで屋上を駆け下りていった。
「あいつ…。」
孝太郎はポリポリと頭をかいた。
入れ違いに同好会の一年生の後輩二人が来た。
「山田先輩、話があります。」
カンの鋭い孝太郎は、なんだかわかったような気がした。
「話って何?」
込み入った話を二人は始めたのだった。
物語の初めは、こちらになります。
バドミントン同好会 1 -不調からの始まりの物語-
物語の続きは、こちらになります。
バトミントン同好会 2 -廃部と入部と-
物語の続きは、こちらになります。
バドミントン同好会 3 -孝太郎と恋バナと-
物語の続きは、こちらになります。
バドミントン同好会 4 -成就と失恋と-
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