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●詩、小説●

2024-05-04 13:07:56

雨の中の子犬



作 林柚希

雨の中で出会ったあの日
「飼ってください」の冷たい文字
思わず立ち止まって
覗きこむと
黒い目に鼻の周りの黒い子犬

「うちは飼えませんよ」
お母さんの言葉を思い出すけれど
震える子犬を見て大決心
(せめて暫くの間まで)

家の小さな庭に隠して
こっそりとミルクをあげてみる
遠慮がちに飲み始める子犬
思わず抱きしめて一大決心
(きっと飼ってみせる!)

夕ご飯の後、サイコロステーキをちょろまかして
お皿に盛ってコソコソと
お庭でまた楽しい再会
ものすごくお腹が空いていたのかな
勢いよく食べ始める

「アナタ、何やってるの?」
ハっと振り返ると
お母さんの疑問顔が一転
「ウチでは飼えませんよ!」

お母さんとひと悶着
これまで続かなかったおけいこ事
(でも、これだけは!)

絶対引き下がらない僕に
お母さんはとうとう根負け
「じゃあ、お父さんと話してからね」

(やった!)
これまでこんなに粘ったことないけれど
きっとお父さんにも話してみせる!

「ずっと一緒にいような」
子犬の頭をなでなでして
今日はひとまずおやすみなさい


深夜帰宅のお父さん
「アナタ実は…」
お母さんの困り顔
「しょうがないな」
お父さんの困り顔
お父さんは犬が苦手
小さい時に噛まれてからは触りもしない

「おはよう!」
一大決心の僕にお父さんも
「おはよう」
なんだか微妙な顔つき?

朝ごはんを食べながら
「お母さんに聞いたと思うけれど…」
僕が説明を始める
大体を聞き終えたお父さんは
「実は、お父さんはな」
お父さんの過去を聞かされてびっくり
でも、引き下がりたくはない!
「そうなんだ。でもね世話は絶対僕だけでやるから!」

お父さん「お前、これまで続いたおけいこごとないだろ」
僕「でも、これだけは諦めたくないよ」
僕「子犬を死なせたいの?お父さん」
お父さん「それは…」

かなり考え込んでからお父さんのひとこと
「お前には負けたよ」
「飼ってみなさい。その代り、命を預かるのだから
最後の最後まで、面倒をみなさい」
「わかった!ありがとう!お父さん」

お母さんの用意してくれたご飯を片手に
庭へもうダッシュ!
「おい!飼ってもいいって!!」
ご飯を嬉しそうに食べている子犬を見て
お父さんもひとこと
「お前、名前つけてやれよ」
「そうだね。お父さん、ありがとう」
でも、ちょっと怖そうにしててあまり近寄らない
お父さんも好きになってくれるといいなぁ
まずは、名前を考えなくちゃ
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