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●詩、小説●

2024-03-07 00:22:37

ヘンゼルとグレーテルno.6 -宝物-



作 林柚希

グレーテルを食う為に大鍋に湯を沸かすよう命じたカミラ。
グレーテルは、思わず胸の前で十字を切るのでした。

そして、カミラがグレーテルに言ったのです。
カミラ「グレーテル、パン窯へ行って、パンの焼け具合を見ておくれ。」

その時、カミラの考えを読み取ったヘンゼルは、真っ青になってテレパシー通信してきました。
ヘンゼル(グレーテル!パン窯へ入っちゃだめだよ!)
グレーテル(でも、入らないと怖いよ、お兄ちゃん。)
ヘンゼル(大丈夫。僕が教えるから。)
グレーテル(どうしたらいいの?)
ヘンゼル(パン窯はどうしたらいいか、わからないと言うんだ。見本を示してくれって。)
グレーテル(わかった。後は?)

そこでテレパシー通信は終わってしまい、カミラが怒鳴っていることに気が付いた。

カミラ「どうしたんだい!!このウスノロ!」
グレーテル「はい、すみません、カミラさん。もう一度言ってください。」
カミラ「もう一度言うさね。パン窯へ行く事!わかったさね?」
グレーテル「あの、私…。」
カミラ「あたしゃがね、先導するから。行くよ!」
グレーテル「はい。」

台所の小屋にやってくると、パン窯の小部屋の前でカミラがここに入るよう言いました。
だけど、グレーテルは、ちょっとわからないから先に入って説明してほしい、と言いました。
チッと舌打ちをしたカミラは、びっこを引きながらパン窯に入ると奥で、ここで、と説明を始めた。
その時、グレーテルはパン窯のドアを急いで閉めると、かんぬきを下ろしました。
ギャっと振り向いたカミラが、パン窯の中のドアの前でガンガンドアを叩きながら怒鳴りつけていました。
そして、パン窯から離れて台所のある小屋を出ると、グレーテルはその足で家畜小屋へ急ぎました。
家畜小屋でヘンゼルを見たグレーテルは、ヘタヘタと足が崩れそうになりました。
けれど、頑張ってヘンゼルを閉じ込めたかんぬきをあげて、ヘンゼルを救出したのです。

2人は喜び合いました。
ヘンゼルは健闘をたたえ合い、グレーテルはヘンゼルに抱きついて泣いていました。
喜びの涙が切れる頃、グレーテルはヘンゼルを伴ってお菓子の家の中に入りました。
お菓子の家は、ただの山小屋になっていました。
魔女の家を色々探すと、カミラの部屋から沢山の宝石が見つかりました。
そして、グレーテルが寝泊まりしていたベッド下には、グレーテルがこっそり隠した野菜や果物、お肉といったものがカゴに入っていました。
宝石と食材を2つのカゴに入れて、兄妹は家路についたのです。
家までは、カミラが持っていた、魔法の品の水晶で帰ることができました。

家に着くと、お父さんとお母さんの言い争う声が聞こえました。
お父さん「おい、食事はないのか?」
お母さん「もうないわよ。」
お母さんはゴホゴホと咳をしています。
お父さん「やはり、子供たちを残していかなきゃよかった。」
お母さん「そうはいっても、もう食材はないのよ。」
お父さん「お前は!子供たちが可愛くないのか!」
お母さん「そりゃ可愛いわよ。私だって鬼じゃないのよ…。」
お父さん「俺も、バカだった。子供達をみすみす置き去りにして。くそう。」
お父さんは、その辺にあったものをお母さんに投げると、また言った。
お父さん「子供たちを探してくる。やはり何かしたい。待ってられない。」

そんな様子を聞いて、兄妹は、もうやめて!と家の中に入ったのです。
ヘンゼル「お父さん!もうやめて!僕達は帰ってきたよ。」
グレーテル「そうよ、お父さん。お母さんが可哀そうだよ。」
お母さん「お前たち…。」
お父さん「お母さんはお前たちを、置き去りにしようとしたんだぞ!俺もだ。」
ヘンゼル「知ってる。だけど、僕達は宝物を見つけたんだよ。」

そう言って、ヘンゼルとグレーテルは2つのカゴを見せました。
そこには、野菜や果物、お肉といったものや、宝石が入ってきました。
お父さんもお母さんも驚いて、思わず言いました。

お父さん「この宝物はどうしたんだい?」
ヘンゼル「悪い魔女をやっつけて、手に入れたんだ。」
お母さん「悪い魔女?」
グレーテル「私もお兄ちゃんも食べられそうになったの!」

お父さんもお母さんもまた驚きました。
そして、この魔女との怖い冒険譚を話して聞かせたのです。

お父さんも、お母さんも、それからヘンゼルもグレーテルもこの宝物のおかげで幸せになることができましたとさ。


※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.2 -辿るパンくず-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.3 -お菓子の家-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.4 -老婆の魔女-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.5 -家畜小屋-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.6 -宝物-
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2024-03-06 10:51:39

ヘンゼルとグレーテルno.5 -家畜小屋-



作 林柚希

翌朝、魔女であるカミラは、ヘンゼルを起こすと、こう言いました。

カミラ「起きたかい?」
ヘンゼル「起きたよ。カミラさん。おはよう。」
カミラ「おはようさね。ちょっと家畜小屋までついてきてくれるかい?」
ヘンゼル「いいですよ。」
カミラ「家畜に餌をやって欲しいんだよ。家畜当番になってほしくてね。」
ヘンゼル「僕やったことが無くて。」
カミラ「それは教えるから大丈夫さね。これから行くよ。」

カミラは、ヘンゼルを先導するとびっこを引きながら家畜小屋まで歩いて行った。
家の外に出ると、食べたはずのお菓子の家は、元通りのお菓子の家になっていた。

カミラ「家畜小屋だよ。ああ、まずね掃除も頼むさね。」
ヘンゼル「わかったよ、カミラさん。」
カミラ「この小部屋の掃除を頼む。」
ヘンゼル「ここだね。」

ヘンゼルがその小部屋の奥に入ると、そこにはなぜか簡素なベッドがあった。
家畜小屋に何で?と思った途端、ガチャリとかんぬきの降りる音がした。
ヘンゼルは小部屋に閉じ込められてしまいました。

ヘンゼル「カミラさん!どういうこと?」
カミラ「なに、家畜小屋はお前の為の小屋でもあるさね。」
ヘンゼル「僕の為?僕をどうするの?」
カミラ「簡単なことさ。食べるんだよ。」

イーヒヒッヒ、と笑いながらカミラは家畜小屋を後にした。
悲鳴めいたヘンゼルのテレパシー通信を聞いて、グレーテルは恐ろしくなってガタガタと震えていました。
カチャ、と家のドアが閉まる音を聞くとグレーテルは急いで眠っているフリをしました。
しばらく経つと、カミラがやってきて、グレーテルを叩きおこしました。

カミラ「ホラ、いつまで寝ているつもりさね。さっさとおし!」
グレーテル「はい…。」
カミラ「おや、起きていたのかい。」
グレーテル「ヘンゼルはどうしたの?」
カミラ「ああ、食べるのさ。今閉じ込めてきたさね。」
グレーテル「そんな…。」
カミラ「そのためには太らせなくてはね。お前は食事当番さね。」
グレーテル「そんなこと止めて!カミラさん。」
カミラ「そうはいかないよ。さぁ、食事を作る時間さね。」

グレーテルは思わず、神様、と十字を胸の前で切ると、カミラは嫌そうな顔をしました。
それから、普通の食事ではなく、上等の食事を作るよう、カミラが命じると、グレーテルは泣きながら作ったのでした。
そして、二人の秘密のテレパシー通信で励まし合ったのです。
事のあらましを聞いたヘンゼルも青ざめましたが、小屋の中で身体を鍛えるから大丈夫だよ、とグレーテルに言い聞かせました。

それから、毎日グレーテルは上等の食事を作っていました。
そして、ヘンゼルの太り具合を確かめる為、家畜小屋に来たカミラはかんぬきの降りたドアの前に立つと、言ったのです。
「太り具合を確かめるから指を触らせろ」と。
ヘンゼルは考えて、食事で出ていた鶏肉の骨をドアの隙間から差し出してみました。
目の悪いカミラはそれが鶏肉の骨とわからなかったようです。
骨を触って、「まだまださね。」と言って首を振っていました。

毎日太り具合を確かめるカミラでしたが、鶏肉の骨で自らを守るヘンゼルに不思議に思っていました。なかなか太らないさね、と。
そして、約4週間たった頃、カミラはグレーテルに言いました。

カミラ「グレーテル、大鍋を用意しな!」
グレーテル「なんで大鍋なんて…。」
カミラ「もう待ってられないさね。ヘンゼルを食うよ!」
グレーテル「そんな…。待ってください。まだ、まだ太ってないでしょう?」
カミラ「いいさね。もう太っているかもしれないから。」

翌朝、カミラは大鍋に湯を沸かすように、グレーテルに命じたのでした。


※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.2 -辿るパンくず-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.3 -お菓子の家-

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紹介「ヘンゼルとグレーテルno.4 -老婆の魔女-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.5 -家畜小屋-

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2024-03-05 16:56:55

ヘンゼルとグレーテルno.4 -老婆の魔女-



作 林柚希

ヘンゼルとグレーテルの兄妹が大喜びでお菓子の家を食べていました。
すると、クッキーのドアが開いて、一人の老婆が家の外に出てきました。
老婆は、ワシ鼻にギョロリとした大きな目のおばあさんです。
黒いフードを背中に垂らし、灰色の衣服を身にまとっていました。
足が悪いのか、杖をついてびっこを引いていました。

老婆「誰かの?」
グレーテル「あ!おばあさん、ごめんなさい。勝手にお菓子の家を食べちゃって。」
ヘンゼル「あまりに美味しそうないい香りがしていて思わず食べました。ごめんなさい。」
老婆「まぁ、食べてしまったのは仕方ないの。」
ヘンゼル「よかったら、もっと食べてもいい?お腹が空いてて…。」
老婆「それ以上、家を食べられると困るからやめてくれ。その代わり、食べ物をやるからの。」
老婆の乾いた笑い声に、ヘンゼルとグレーテルはヒヤリとしながらも家に招待されたのでした。

家の中に入ると明らかに広いので、兄弟は驚きました。
台所は別の建物にありましたが、ベッドが幾つかある部屋が1部屋、老婆の部屋が2部屋ありました。
他に皆で食事するダイニングが1部屋、暖炉がしつらえられている部屋が1部屋でした。

老婆「このベッドのある部屋で休みなさいな。」
ヘンゼル「ありがとう、おばあさん。」
グレーテル「お腹空いているんだけど、食べ物はあるかな?」
老婆は、チッと舌打ちすると、できるだけ笑い顔にして答えました。
老婆「食べ物はあるよ。後であげるから。」
グレーテル「ありがとう。おばあさん。」
ヘンゼル「ありがとう。」
老婆「二人とも、こんな森の中でどうしたんだい?」
グレーテル「私達…。」
涙ぐみそうになるグレーテルに慌てたヘンゼルが急いで言いました。
ヘンゼル「森で迷ってしまって。」
老婆「迷ったのかい?家はどうしたんだい。」
ヘンゼル「家に帰る途中だったんだ。家にはお父さんとお母さんが待ってる。」
老婆「そうかい。それならしばらくここにいるかい?」
グレーテル「いいの?おばあさん。」
老婆「いいよ、この家は私一人だ。まぁいればいいさ。」
ヘンゼル「ありがとう、おばあさんいい人だね。」
グレーテル「ありがとう。」
老婆「ただしね、あたしはこの通り足が不自由なんだ。家事を手伝ってくれると助かるさね。」
ヘンゼル「僕、手伝うよ、おばあさん。」
グレーテル「私も、手伝います!」
老婆「ああ、お前さんが手伝ってくれるといいさね。」とグレーテルを指さしました。
グレーテル「わかったよ、おばあさん。」
老婆「二人とも名前聞いてなかったね。」
ヘンゼル「僕はヘンゼルといいます。」
グレーテル「私はグレーテルです。」
老婆「あたしゃ、カミラってんだ。よろしくな。」
ヘンゼル「よろしくお願いします、カミラさん。」
グレーテル「よろしくね。カミラおばあさん。」
老婆「その、「おばあさん」は、よしとくれ。私はまだ若いつもりさね。」
また乾いた笑いをするカミラに兄妹はやっぱりヒヤリとしていました。

兄妹はカミラと食事を作ると、早々にベッドで休んでしまいました。
カミラの思惑も知らずに。
カミラは、そっと外に出ると、野菜を売りに来た行商人とおしゃべりをしていました。

行商人「野菜を安くするよ。」
カミラ「ありがたいね。」
行商人「家の中に誰か人の気配がするね。誰かいるのかい?」
カミラ「まぁ、子供が二人いるよ。」
行商人「あんたさんは、子供なんていなかっただろ?」
カミラ「まぁね。迷い込んだのさ。」
また乾いた笑いをすると。
行商人「その子供、売ってくれんかな?」
カミラ「それはダメなんだよ。」
行商人「どうするんだい?」
カミラ「まぁね、食っちまおうかと思ったのさ。」
行商人「御冗談を!」
カミラ「まぁ、冗談だよ。気にしなさんな。」
行商人「逆に売って欲しいものがあるんだった。」
カミラ「なんだい?」
行商人「惚れ薬なんだけど、あるかい?」
カミラ「ああ、あるよ。野菜と物々交換でいいかい?」
行商人「いいよ。他に毒薬もオーダーがあってね。あるかい?」
カミラ「今はないんだが…。今度作っておくよ。」
行商人「それは助かる。」

カミラと行商人は、惚れ薬と野菜を交換すると別れていった。
カミラは、魔女だったのです。
さて、ヘンゼルとグレーテルはどうなるのでしょうか。

※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

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紹介「ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-

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紹介「ヘンゼルとグレーテルno.4 -老婆の魔女-

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2024-03-04 19:40:38

ヘンゼルとグレーテルno.3 -お菓子の家-



作 林柚希

木こり一家のお母さんが、兄弟が一度も来たことのない深い森へ来ると言いました。

お母さん「森へ着いたわ。さぁ食材を探してね。」
ヘンゼル「でも、一度も来たことのない森だよ?大丈夫なの?」
お父さん「この辺は大丈夫だ。狼が来ることもないだろ。」
グレーテル「オオカミ?怖いよお父さん。」
お父さん「大丈夫だよ。狼は来ないから。安心しろ、グレーテル。」
グレーテル「うん…。」
お母さん「また美味しい食材をあてにしているわ。頑張ってね、二人とも。」
お父さん「頑張れ!」

両親ともその場を去ると、足音が聞こえないくらいの距離で、ヘンゼルが言いました。
ヘンゼル「さぁ、後をつけるよ、グレーテル!」
グレーテル「うん。お兄ちゃん!」

なるべく距離を保って、両親の後をつける兄妹。
でも、太い木の根に足を引っ掛けて、グレーテルは転んでしまったのです。
きゃ!、といって転ぶと、グレーテルの声を聞きつけて、両親は足早に去っていきました。
ここは、深い森。
ヘンゼルは、妹を立たせると、「大丈夫かい?」と優しく声をかけました。
グレーテルは、「やだよーお兄ちゃん~。」としばらく泣き止みませんでした。
グレーテルが泣き疲れてウトウトしだしてきても、ヘンゼルはどうすることもできませんでした。
その間、木の根近くで眠りこけたグレーテルの側で、グレーテルはしっかりと寄り添って守っていたのです。

そして小一時間ほど経った頃、グレーテルが目を覚ましました。
グレーテル「う…。お兄ちゃん?」
ヘンゼル「お兄ちゃんだよ、グレーテル。」
グレーテル「ここどこなの?」
ヘンゼル「森の中だよ。」
グレーテル「そっか。お兄ちゃん、私達…。」
ヘンゼル「言うな!そんなことはないよ。お父さんが言っていただろ。食材を探して来いって。」
グレーテル「でもね。置いてかれちゃった。」
またうっすら泣きそうになるグレーテルを必死になだめ、ヘンゼルは言いました。
ヘンゼル「大丈夫!道はわかるからね、帰れるよ。」
グレーテル「ほんとに?お兄ちゃん。」
ヘンゼル「本当に。大丈夫!任せて。」

でも、内心ヘンゼルは焦っていたのです。
道すがら落としたパンくずを、眠ったグレーテルを思いやりながら見定めていたら、キキっと、シマリスが運んで行ったのを見たのです。
パンくずはだめかもしれないと思った瞬間でした。
でもヘンゼルはまだ諦めませんでした。

ヘンゼル「さ、これを食べよ!」
グレーテルに差し出したのは、花でした。
グレーテル「花を食べるの?」
ヘンゼル「違うよ。花の汁を吸うんだよ。」
グレーテル「美味しいの?お兄ちゃん。」
ヘンゼル「甘くて美味しいよ。こうやるんだよ。」
ヘンゼルはお手本を示すと、グレーテルは真似をして花の汁を吸いだしました。

グレーテル「甘いね、お兄ちゃん。」
ヘンゼル「そうだね。」
グレーテル「お腹空いちゃった。」
ヘンゼル「沢山取ったぞ!食べてね。」
グレーテル「うん!」

兄妹は、花の汁と、家からヘンゼルがコッソリ持ってきた野イチゴを食べると、歩き出しました。
一晩中、森の中をさまよって、もう歩けないとグレーテルが言いだした頃、どこかしらから甘くていい香りが漂っている場所に出たのです。
そこは、まだ森の中でしたが、もう日が昇り始めて、森の中は明るくなってきていました。

兄妹が、くんくんと甘くいい香りを辿って、広い場所に出ました。

そこには、驚くべき家が一軒だけ建っていました。
屋根にはホイップクリームが並び、壁はフランスパンでできています。
窓の格子はチョコレートでした。
また、窓にはまったガラスに見えるのは、砂糖でした。
ヘンゼルとグレーテルはかなり驚き、その一軒家をぐるっと回って見渡しました。

ドアは、クッキーでできていました。
家の壁の装飾は、ショートケーキです。
それからクッキーや砂糖菓子でもあります。

グレーテル「お兄ちゃん!凄いね!」
ヘンゼル「そうだね。」
グレーテル「私、お腹空いた!」
ヘンゼル「僕もだよ!」
グレーテル「食べようよ!お兄ちゃん」
ヘンゼル「そうだね!食べよう!」

ヘンゼルとグレーテルは、壁に張り付くと、クッキーやショートケーキを手に取り食べ始めたのでした。

※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

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2024-03-03 02:21:17

ヘンゼルとグレーテルno.2 -辿るパンくず-



作 林柚希

ヘンゼルとグレーテルは、白く光る石を辿りながら、なんとか家へたどり着くことができました。
ヘンゼル「ただいま!」
グレーテル「ただいま!」

そんな兄妹に、しょげていたお父さんは大喜びでした。
お父さん「お前たち!帰ってきたんだな!」
ヘンゼル「帰ってきたよ!お父さん。」
グレーテル「帰ってきたよ。お母さん。」
お母さん「そう。おかえり。お前たち。」
ヘンゼル「野イチゴを取ってきたよ。」
グレーテル「エライでしょ?お母さん。」
お母さん「そうかい。まぁ、美味しそうだね~。」
お父さん「カゴ一杯じゃないか。ありがとうな、お前たち。」
お父さん「おかげで食いつなげるじゃないか!嬉しいぞ。」

木こり一家は、鮮やかで甘く美味しい野イチゴを一部ジャムにして、パンに付けて食べました。また、残りはお茶に入れたり、そのまま食べたのです。

久しぶりの美味しい食事は、とても盛り上がりました。
だけど、お母さんは、こっそりとため息をついていました。
この先はどうしようと。
その夜の夫婦の会話です。

お父さん「うちの子供達、なかなかやるじゃないか。」
お母さん「そうねぇ。」
お父さん「それなら、もっと森の奥なら、もっと色々な食材があるかもしれないな。」
お母さん「え。まぁそうだけど…。」
お父さん「ノリが悪いな。」
お母さん「そうだわね。今度はもっと奥の森まで連れて行きましょう。」
お父さん「そうだな。」

それを聞いた兄妹はまた顔色が青くなったのです。

ヘンゼル「お父さんたら、あんなこと言って…。」
グレーテル「お父さんとお母さんは、私達がキライなんだきっと。」
ヘンゼル「そんなことないよ。家は食べ物がないから困っているんだよ。」
グレーテル「そうだけど…。」
ヘンゼル「大丈夫!また家に帰るようにするからな!」
グレーテル「うん!お兄ちゃん頑張って!」

グレーテルがウトウト眠りだす頃、またヘンゼルは白い小石を集めようと家から抜け出そうとしていましたが、戸口にカギがかけられていて、出ることが叶わなかったのです。
ヘンゼルは一人青くなっていました。
そのまま日が明けてしまいました。

翌朝、木こりの一家はこんな会話をしていました。

お母さん「今日は昨日よりも、もっと森の奥まで行ってみましょう。」
グレーテル「え~!やだよ。お母さん。」
お父さん「お前たちは賢いからな。大丈夫だよ。」
ヘンゼル「うん。お父さん。」
グレーテル「お兄ちゃん。大丈夫?」
ヘンゼル「うん。眠くてな。でも大丈夫だぞ。」
お父さん「その意気だぞ!ヘンゼル!」
お母さん「その代わりにね、お弁当にパンを持っていきますからね!」
グレーテル「ホント?お母さん。」
お母さん「本当よ。森の奥まで行っても大丈夫だわよ。」
ヘンゼル「ありがとう!お母さん。」
お父さん「大丈夫なのか?食材の方は。」
お母さん「大丈夫!」

お母さんは、二人分のパンをかごに入れ、ヘンゼルに持たせました。
そして木こり一家は森に入っていったのです。
道すがら、ヘンゼルはカゴからパンをコッソリパンくずにすると、少しづつ道に落としていったのです。
そして、道案内のお母さんが兄妹が一度も行ったことのない森へ案内していきました。


※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

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2024-03-02 09:03:29

ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-



作 林柚希

とある森の中に、貧しい木こりの夫婦とその兄弟が住んでいました。
兄妹はヘンゼルとグレーテルといいました。
一家は、その日の食事がままならないほど貧しかったのです。

そんな時、奥さんにこんな提案をされたのでした。
お母さん「あなた、もう食事を食べるための食物が無いの。」
お父さん「何かないのか?」
お母さん「ないのよ。思い切って子供たちを森の中に置いてきましょう。」
お父さん「それは。…それしかないのか?」
お母さん「もう、食べていけないのよ。」
お父さん「わかった。明日そうしよう。」

その話を聞いた兄妹はこんな会話をしていました。
グレーテル「お兄ちゃん、私達捨てられちゃう。」
ヘンゼル「そんなことないよ。大丈夫!」
グレーテル「だけど、どうしたらいいの?」
ヘンゼル「お兄ちゃんに任せて!だからもう寝よう?」
グレーテル「うん。おやすみ。お兄ちゃん。」

グレーテルが寝ているうちに、そっと家から抜け出すとヘンゼルは河原に行き、白い小石を沢山集めて持ち帰りました。
次の日の為に。

次の日。
お母さん「今日は森の中へ行くわよ。」
グレーテル「でも、今日は、あまり行きたくはないよ、お母さん。」
お父さん「そうはいかないんだよ。食べ物を探さなくてはいけないんだ。」
ヘンゼル「そうしたら、一緒に帰ってもいい?お父さん。」
お母さん「森の中でかなり探すからね。私たちは帰れないかも。」
グレーテル「そうなの?お母さん。」
お父さん「大丈夫だよ。後で迎えに行くからね。」
ヘンゼル「わかったよ、お父さん。」

森の中へ木こり一家が入っていきました。
お母さんが道案内をして、グレーテルはお父さんに手を引いてもらいました。
兄のヘンゼルはこっそりポケットから小石を出すと、ポト、ポトと道すがら落としていきました。
そして、兄弟はこう言われました。

お母さん「さぁ、森の中で食べ物を探してね。」
ヘンゼル「でも、暗くてわかりずらいよ、お母さん。」
お父さん「よく目を凝らせばわかる。頑張れ。」
ヘンゼル「わかったよ、お母さん、お父さん。」

グレーテルも、涙を流しそうになりながら、わかった、と小さく答えました。
両親、とりわけお父さんは名残惜しそうに去ると、ヘンゼルとグレーテルは本当に食べ物を探し始めたのです。

そして、とても赤くて甘く美味しい野イチゴを沢山取ってカゴにしまうと家へ帰る道を探そうとし始めました。
辺りは薄暗く、森の中はうっそうとしています。

ヘンゼル「大丈夫かい?グレーテル。」
グレーテル「お兄ちゃん、私は怖いよ~。」
ヘンゼル「大丈夫だよ。僕が手を引いてあげるからね。」
グレーテル「家はどこなの?どこにいるかわからないよ、お兄ちゃん。」
ヘンゼル「帰り道はわかるよ。道に落ちている、白い小石を辿るんだよ。」
グレーテル「そうなの?」
ヘンゼル「大丈夫。絶対に家へ帰られるからね。」
グレーテル「そうだね。お兄ちゃん。」
ヘンゼル「家に帰って、お父さんたちを驚かそうね!」
グレーテル「うん!」

ヘンゼルは、グレーテルの手を引きながら、道に落としていった白く光る小石を辿っていったのでした。


※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-

物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.2 -辿るパンくず-

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