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●詩、小説●

2024-04-09 02:16:15

眠り姫 vol.3 -目覚め-



作 林柚希

そしてある塔の最上階へ来ました。

女性が一人、倒れています。
金髪に白磁のような肌、そして小さな王冠を付けていました。
服は100年経っているとは思えないほど豪華な衣服です。

(古めかしい衣装だけど、可愛らしい人だな。)

王子は、可愛らしいその容姿にポーっとしてしまいました。
その手を取り、思わずキスをすると「王女様ですか?」と言いました。

倒れた女性の瞼が震え、瞬きをすると、その可愛らしい瞳がこちらを向きました。
顔を王子に向けて、こう言ったのです。

「あら?あなたは誰ですか?」
「僕ですか。この国の近くにある国の王子です。見分の為、近くを旅していました。あなたは誰ですか?」

王女「私はこの国の王女です。私は…。」
王子「ああ、あなたは100年くらい眠っておられたのですよ。魔法使いによってね。」
王女「そ、そんな…。では私の父や母は。」
王子「大丈夫です、この城の中の人々は皆眠っていたようですから。皆生きていますよ。」

王子様は王女様の手を取って、立たせると一緒に塔を降り始めました。
王女「あなたは、この国にどのくらい滞在するのですか?」
王子「特に決めていません。」
王女「そうですか。できたら長くいてほしいです。」

王子様をまじまじと見る王女様も、ポーっとしているようです。
王子「まだ、あって間もありませんけれどね。」

そう言って、王女様を抱きとめるとキスをしました。
王子「僕の気持ちです。」
王女「まぁ、ありがとう。」

そう言うと、王女様もキスを返しました。
王女様も王子様も頬が赤く染まっている様子。

塔を降りると、「まぁまぁ、王女様!」
執事が、どこにいたんですか!、と心配したことを切々と訴えました。
そして、大広間に行くと、王様と王妃様は待っていました。

王様「おお!心配したぞ、姫」
王妃「そうですよ。心配しましたよ。」
王女「心配かけてごめんなさい。この通り大丈夫です。」
王様「それで、隣の青年は誰なのかな?」
王子「僕は近くの国の王子です。見分を広める為、旅をしています。」
王様「それは、感心だな。して、この国には何ようかな?」
王子「実はこの国に糸を輸出していました。けれど、ここ数年あまり輸出されなくて理由を求めていたところです。」
王様「糸?」
王妃「王様。この国はツムを撤去したでしょう?だから、糸を輸入するしかなくなったのですよ。」
王様「そうだったな。だが、この国はまた糸を生産したんだろうか。」
王子「この国、というよりこの城は約100年眠っていた状態だったのです。そのうちにまた、街中では糸を作るようになったのでしょうね。」
王様、王妃「なんだと!?100年!?」
王女「そうなの父上。私がツムに刺さって眠っている間に、それだけ時が経ってしまったのね。」
王様「そうなのか…。」
王妃「そうすると城の中だけ、眠りに落ちていたのかしら?家来の家族は市街地でしょうからもう…。」

一同シーンとしています。

王様「まぁよい、生きているうちはなんとかなる。」
王様は、二人を見つめて、ニッコリするとこう言いました。

王様「姫、それから近隣の王子よ。そなたたちで結婚する気はないかな?」
王妃「まぁ、それは、いいですわね。」
王女「父上、まぁ、出会ったばかりですよ。」
王子「僕は、その提案を受けてもいいと思っております。姫」
王女「はい。」
王子「僕と結婚しませんか?」
王女「はい、…喜んでお受けします。」

王様「これは、よい機会に恵まれたな。良かった。」
王妃「王子はお疲れでしょう。姫のお部屋へ下がってもいいですよ。」
王様「そうするといい。」
王子「そうさせてもらいます。」

王女様は、では、とひとつ礼をすると王子と部屋へ下がっていったのでした。

この国は、眠り姫と近隣の王子と共に幸せになったとさ。


※よく言われる所の童話「眠り姫」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
眠り姫 vol.1 -眠る理由-

物語の続きは、こちらになります。
眠り姫 vol.2 -旅人-

物語の終わりは、こちらになります。
眠り姫 vol.3 -目覚め-
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2024-04-09 00:04:36

眠り姫 vol.2 -旅人-



作 林柚希

長い年月が経ち、人々から忘れ去られた頃、一人の男性がこの国を訪れました。
街中で、茨に覆われた大きな建物があると聞き、興味を持ったのです。

実際に、茨の前にやってきました。
確かに、たくさんの茨は大きな壁を這って覆い、中を見せません。
こんなうっそうと茂った茨をどうしようと思いながら、近くの普通の家を訪ねてみました。

近所の人「実はお城だと伝えられています。中はよくわかっていないんです。」
男性「そうですか。それなら、なにか茨を切る道具を貸してもらえませんか?」
近所の人「いや、家には無いんですよ。街中に出て、刃物の専門店で買った方がいいと思います。」
男性「わかりました。どうもありがとう。」

男性は街中で、色々な探検道具を買うと、また茨の前にやってきました。
まず、大型のナタで切ってから、火で茨を焼くと奥に進んでいきました。

それを見た、男性が訪ねた近所の人がニッコリと笑い「この男性なら。」と言って、指をぱちんと鳴らすと去っていきました。
近所の人は、かつての12人目の魔法使いのようでした。
茨は、ゆっくりと解けて、地面に落ちていきました。

茨の奥は、大きな城でした。
驚いた男性は、城に一歩入ると「おーい、誰かいるかー?」と大声をあげました。

(僕のいた城よりも、はるかに大きいな。誰もいないのかな。)

シーンと静まりかえった城内で、あちこちに横たわっている人々を見かけました。
死んでいる?と思った男性は、横たわっている人を良く観察すると、どうやら眠っているようでした。

(どうして眠っているのだろう?)

探検している男性は、助けを呼ぼうかと思いましたが、まずもう少しよく見てみようと奥に探しに行きました。
色々な部屋や大広間をみましたが、王様や王妃様、それに付き従う人々など、男性が驚いていたことに、皆倒れて眠っているようでした。

どうしようかと思案していると、一つの光とともに精霊が現れました。

精霊「あなたは誰?」
男性「僕は近くの国の王子だよ。」
精霊「あなたは何をしているの?」
王子「見分を広めるために旅をしているんだ。それで、この城の噂を聞いてね。」
精霊「それで?」
王子「探検しようと来たんだ。だけどこの城の中は、まるで時が止まったようだね。」
精霊「ある意味そうだね。」
王子「城の中の人々は眠っているようだね。どのくらい経つんだろう。」
精霊「約100年だね。」
王子「100年!?凄いね。この呪いは僕にも波及するのだろうか。」
精霊「ああ。呪いは解けたから大丈夫だよ。」
王子「そうか、良かった。」
精霊「一つ、お願いがあるんだ。」
王子「なんだい?怖いな。」
精霊「王女様を起こしに行って欲しいんだ。」
王子「王女様?眠ったままなのかい?」
精霊「そうなんだ。頼む。」
王子「僕にできるかわからないけど、わかったよ。」

精霊は、言ってなかったけれど、と精霊が王妃様と仲が良かったこと、それから呪いの経緯について説明したのでした。
王子は、非常に驚いて、それから王女様はどこにいるのか尋ねました。
精霊は、塔の最上階だよ、と言うと、幸運を、とだけ言ってパッと消えました。

王子は、王女様ってどんな人なんだろう、と興味を持ちましたが、まず助けないと、と探し始めました。

※よく言われる所の童話「眠り姫」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。

物語の初めは、こちらになります。
眠り姫 vol.1 -眠る理由-

物語の続きは、こちらになります。
眠り姫 vol.2 -旅人-

物語の終わりは、こちらになります。
眠り姫 vol.3 -目覚め-
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