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●詩、小説●
2024-03-04 19:40:38ヘンゼルとグレーテルno.3 -お菓子の家-
作 林柚希
木こり一家のお母さんが、兄弟が一度も来たことのない深い森へ来ると言いました。
お母さん「森へ着いたわ。さぁ食材を探してね。」
ヘンゼル「でも、一度も来たことのない森だよ?大丈夫なの?」
お父さん「この辺は大丈夫だ。狼が来ることもないだろ。」
グレーテル「オオカミ?怖いよお父さん。」
お父さん「大丈夫だよ。狼は来ないから。安心しろ、グレーテル。」
グレーテル「うん…。」
お母さん「また美味しい食材をあてにしているわ。頑張ってね、二人とも。」
お父さん「頑張れ!」
両親ともその場を去ると、足音が聞こえないくらいの距離で、ヘンゼルが言いました。
ヘンゼル「さぁ、後をつけるよ、グレーテル!」
グレーテル「うん。お兄ちゃん!」
なるべく距離を保って、両親の後をつける兄妹。
でも、太い木の根に足を引っ掛けて、グレーテルは転んでしまったのです。
きゃ!、といって転ぶと、グレーテルの声を聞きつけて、両親は足早に去っていきました。
ここは、深い森。
ヘンゼルは、妹を立たせると、「大丈夫かい?」と優しく声をかけました。
グレーテルは、「やだよーお兄ちゃん~。」としばらく泣き止みませんでした。
グレーテルが泣き疲れてウトウトしだしてきても、ヘンゼルはどうすることもできませんでした。
その間、木の根近くで眠りこけたグレーテルの側で、グレーテルはしっかりと寄り添って守っていたのです。
そして小一時間ほど経った頃、グレーテルが目を覚ましました。
グレーテル「う…。お兄ちゃん?」
ヘンゼル「お兄ちゃんだよ、グレーテル。」
グレーテル「ここどこなの?」
ヘンゼル「森の中だよ。」
グレーテル「そっか。お兄ちゃん、私達…。」
ヘンゼル「言うな!そんなことはないよ。お父さんが言っていただろ。食材を探して来いって。」
グレーテル「でもね。置いてかれちゃった。」
またうっすら泣きそうになるグレーテルを必死になだめ、ヘンゼルは言いました。
ヘンゼル「大丈夫!道はわかるからね、帰れるよ。」
グレーテル「ほんとに?お兄ちゃん。」
ヘンゼル「本当に。大丈夫!任せて。」
でも、内心ヘンゼルは焦っていたのです。
道すがら落としたパンくずを、眠ったグレーテルを思いやりながら見定めていたら、キキっと、シマリスが運んで行ったのを見たのです。
パンくずはだめかもしれないと思った瞬間でした。
でもヘンゼルはまだ諦めませんでした。
ヘンゼル「さ、これを食べよ!」
グレーテルに差し出したのは、花でした。
グレーテル「花を食べるの?」
ヘンゼル「違うよ。花の汁を吸うんだよ。」
グレーテル「美味しいの?お兄ちゃん。」
ヘンゼル「甘くて美味しいよ。こうやるんだよ。」
ヘンゼルはお手本を示すと、グレーテルは真似をして花の汁を吸いだしました。
グレーテル「甘いね、お兄ちゃん。」
ヘンゼル「そうだね。」
グレーテル「お腹空いちゃった。」
ヘンゼル「沢山取ったぞ!食べてね。」
グレーテル「うん!」
兄妹は、花の汁と、家からヘンゼルがコッソリ持ってきた野イチゴを食べると、歩き出しました。
一晩中、森の中をさまよって、もう歩けないとグレーテルが言いだした頃、どこかしらから甘くていい香りが漂っている場所に出たのです。
そこは、まだ森の中でしたが、もう日が昇り始めて、森の中は明るくなってきていました。
兄妹が、くんくんと甘くいい香りを辿って、広い場所に出ました。
そこには、驚くべき家が一軒だけ建っていました。
屋根にはホイップクリームが並び、壁はフランスパンでできています。
窓の格子はチョコレートでした。
また、窓にはまったガラスに見えるのは、砂糖でした。
ヘンゼルとグレーテルはかなり驚き、その一軒家をぐるっと回って見渡しました。
ドアは、クッキーでできていました。
家の壁の装飾は、ショートケーキです。
それからクッキーや砂糖菓子でもあります。
グレーテル「お兄ちゃん!凄いね!」
ヘンゼル「そうだね。」
グレーテル「私、お腹空いた!」
ヘンゼル「僕もだよ!」
グレーテル「食べようよ!お兄ちゃん」
ヘンゼル「そうだね!食べよう!」
ヘンゼルとグレーテルは、壁に張り付くと、クッキーやショートケーキを手に取り食べ始めたのでした。
※よく言われる所の童話「ヘンゼルとグレーテル」を私なりに解釈して、イメージを広げて掲載しています。
物語の初めは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.1 -白く光る小石-」
物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.2 -辿るパンくず-」
物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.3 -お菓子の家-」
物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.4 -老婆の魔女-」
物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.5 -家畜小屋-」
物語の続きは、こちらになります。
紹介「ヘンゼルとグレーテルno.6 -宝物-」
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